ジュリアン有生の「徒然なるページ」
4月15日
第23回 世の中、おかしい(新幹線のお弁当編)
ジュリアンと兄は2歳違いだ。その兄が中学へ入学する記念に、よっちゃん(母)が、富士五湖めぐりへ連れて行ってくれた。 ジュリアンと兄の楽しみの一つの中に、「新幹線の中で売ってるお弁当」があった。それまで、食べた事がなかったのだ。で、行きの新幹線の中で食べようと思っていたら、新幹線の発車時刻より早くに駅に着いてしまい、駅の食堂で時間をつぶす事になり、そこで食事をとってしまった。「新幹線の中のお弁当」は、帰りの新幹線に持ち越された。 さて、いよいよ帰りの新幹線に乗り、食事時がやってきた。よっちゃんは、兄に1万円を渡し、「これで何でも好きなの買っておいで。お母さんのも適当に選んできてね」と言った。売店のある車両に兄とジュリアンは走っていった。 色々なおいしそうなお弁当が並んでいた。兄とジュリアンは、買うお弁当を決め、店員さんに「これ3つと、お茶3つちょうだい」と言った。店員さんがお弁当に手をかけ、袋に入れようとした、まさにその時、事件は起こった。 社員旅行チックな大人が3人やってきて、「何でもいいからお弁当81個ちょうだい」と言った。「81個ですか?」と店員はやや困惑したが、次の瞬間「何とかご用意できますので、少々お待ちください」と言った。そして、次に兄とジュリアンの方を向き、言い聞かすような口調で言った。「今日はお弁当は売り切れです」 それだけ言って、袋に入れかけた3つのお弁当を別の大きな袋に詰め出した。 どうしていいのか分からず、兄とジュリアンはその場に立ちつくし、目の前に積み上げられていた沢山のお弁当がどんどん大きな袋に詰められていくのを呆然と見ていた。そして、兄が口を開いた。「さっきあったのに・・・」すると、店員はすかさず「もうないんですよ。売切れてしまって」と言い、後から来た3人の大人と話し出した。 ・・・ ・・・ ・・・ これって、おかしくない? 子供だと思って馬鹿にされた事は、その時のジュリアン達にもわかったが、あまりにも悔しくて悔しくて、それから20年以上も過ぎた今でも「81個」という数まで覚えている。 あーゆー時って、子供でも騒げば何とかなったのだろうか???いやいや、きっと頭のおかしい子供だと思われて、車内アナウンスでよっちゃんが呼びつけられていたに違いない。 富士山も綺麗だったし、旅館のお料理も美味しかったけど、最後の最後で、空腹感と何とも言えないしょぼくれた空気が、ジュリアン親子3人の間の空間を埋めた状態で、新幹線は新大阪駅へと走った。 世の中、おかしい! |