ジュリアン有生の「徒然なるページ」

8月10日

第41回 ダーリンとジュリアンの結婚行進曲
第2章 私、知らない人と結婚するの


会って2回目、キスは愚か手を繋いだことも無い人と、結婚の約束をしてしまったのである。そして、占い師であるにもかかわらず、この時ダーリンのホロスコープさえ知らなかったのである。自分で状況がよくわからない感じだった。キツネに摘まれたような、とはこういう状況をいうのだろうか、とも思った。

帰りの車の中では、ダーリンだけはやけに機嫌が良かった。かなりノーテンキな様子だった。だが、ジュリアンの方は、心配事で心の中はいっぱいだった。

心配事とは何か?

実はジュリアンは、次の日曜日、そうダーリンと結婚式場を探しに行くと決まった日に、よっちゃんの薦める「お見合い」に出向かなければならない先約が入っていたのだった。なのに、勢いでと言うか、ご縁と言うか、ダーリンと結婚する事になってしまい、どう言って断ろうかとその事ばかりが気になっていたのである。

実家の近くまで車で送ってもらい、ダーリンはご機嫌で帰っていった。

家に帰り、ジュリアンは自室に篭り、どうしよう、なんて言おう、ばかり考えていた。

翌日、朝、パンを食べていると、よっちゃんが言った。

「どうしたん?何かあったの?」

「へ?」

「なんか、ヘンよ。なんか、考えてる感じ。何考えてんの?」

親というものは、実によく子供の事をみているのだなぁ、と思った。その時言う決心がついた。

「あのね、今度のお見合いね、やっぱり、気がすすまないの。」

「ふう〜ん。そうなん。じゃ、断わっとこか?」

「いいの?」

「うん、じゅりちゃんがイヤなら、別に行かんでもいいんちゃう?叔母さんに頼んだら、代理はすぐ見つかるわ。お母さんも、今度のお話しはあんまり気がすすまなかったし・・・二人ともが気がすすまんお見合い、行かんでも、もうええやんか。それに、2〜3日前に来たばかりのお話しやから、都合が悪くなったって言っても、向こうも突然過ぎたから仕方ないと思うんちゃう?断っといてあげるわ」

と、いとも容易くよっちゃんは断りの電話を入れてくれた。

が、しかし、その電話の内容を横の部屋で聞いていると

「あのね、悪いんだけど、あの子、実は付き合ってる人がいるんだって。私知らなくて・・・今よく話しを聞いたら、もう結婚の話が出てるって言うのよ、二人の間で。ごめんなさいね。そんな訳で、・・・ ・・・・」

自分のウソが、実は現実のものになっているとは露程も知らずに、現実通りのウソをよっちゃんは並べ立てていた。

そして、日曜日がやってきた。この日は家のかなり近くまで、ダーリンが車で迎えに来てくれる事になっていた。時間になって、少々おめかしして、玄関で靴を履いていると、後ろからよっちゃんがやってきた。

「あんた、そんなカッコして、どこいくの?」

「え?」

「お見合いもう断ったんよ」

「うん。ちょっと・・・あんまり遅くならずに帰ってくるから・・・」

「・・・ ・・・ あんた、何かくしてんの?どこ行くの?」

そこまで突っ込まれ、ジュリアンはもう降参してしまった。

「実は、ホントに結婚するのよ」

「え!?誰と?」

「よく知らないけど、こないだ知り合った人」

「え!?ナニ?その話し。お母さんは知らんよ」

「うん。私も知らんかってん。」

「何がやの?なんでアンタが知らんの?どういうこと?どんな人?今からその人と出かけるの?迎えに来るの?」

「うん、そこのカドまで。・・・見に来る?」

「行く!」

待ち合わせのカドには、もう既にダーリンが到着していた。二人で車に近づいていくと、ダーリンはサイドミラーで、お母さん付だという事に気づき、車から出てきた。

「あ、はじめまして。○○と申します。突然の事で、ご挨拶にも伺わず、順序が逆になってしまい、申し訳ありません。今度改めてご挨拶に伺いたく思ってるんですけど・・・・」等と挨拶をした。後にも先にも、あんなにちゃんと挨拶が出来たダーリンを見たのはあの時だけである。これもご縁の仕業なのかも知れない。

 一目で好印象を持たれたダーリンは、よっちゃんに快く見送ってもらい、ジュリアン達は結婚式場探しに出かけた。

結婚は勢いだ、とはよく言ったもので、なんと結婚式場までが、その日のうちに決まってしまった。

そして、次の日曜日、ダーリンが正式に挨拶をするため、よっちゃんを訪れる事になった。

 

 

しつこく第3章へつづく。。。

徒然TOPへ HOME