ジュリアン有生の「徒然なるページ」

8月20日

第41回 ダーリンとジュリアンの結婚行進曲

<第3章 母親の予感>

 

その日、ジュリアンの実家では、これまでに見たことも無いようなご馳走が座卓に並んだ。1メートルの木の船に盛り付けられた御造り、その周りを取り巻くお寿司その他ご馳走の数々。

約束の時間の少し前から、ジュリアンはダーリンが来るのを門扉の前で待っていた。

ダーリンの車がやってきた。見ると、紺のスーツで来る予定だったダーリンが、ナント水
色のスーツを着てきている。

「何よ、その色!!紺のスーツって言ってたのに。。。」

「暫く着てない間に入らんようになっとったんや!!」

「そういうのは1週間以上前に一度着てみるものよ!!」

「1週間前に決まったんやんか。」

「そらそうやけど。。。」

こんな会話を門前で二人でコソコソ交わしながら、ダーリンは家へ入った。

取り合えず、その日の挨拶を交わし、頃合を見てダーリンが座布団から降りて言った。

「あの、おかあさん、今日は、○○さんと結婚させて頂きたく、お願いに上がりました。え、あの、お願いします!○○さんと結婚させて下さい」深々と頭を下げたダーリンによっちゃんは言った。

「不束な娘ですが、こちらこそどうぞよろしくお願いします。この子は、親の私が言うのも何なんですけど、ホントに優しい子で、これまでずっとお兄ちゃんに守られながら生きてきたような所が有りますので、頼りない所も有りますけど、どうかこの子を守っていってやって下さい」

ダーリンが挨拶をしていた時は、「大丈夫だろうか?上手く言えるだろうか?」とダーリンの事ばかり心配していたジュリアンだったが、よっちゃんのこの言葉を聞いて、グッとこみ上げて来るものがあった。

今から思えば、この日のよっちゃんの口からでたこの言葉は、「母親の予感」から出た言葉だったのかも知れない。

そして、この結婚は、この後、よっちゃんとダーリンが顔を合わす度に、よっちゃんがダーリンに「お願いします!!この子を守れるのはもうあなたしかいないんです。私達はもう常日頃この子の側にいて、この子を守ってやる事は出来ないんです。お願いします。どうか、この子を守ってやってください!」と言い、それに対してダーリンが「おかあさん、本当に申し訳ありません」と涙ぐみながら頭を下げる結果となって行くのである。

そして、この頃から結婚式当日まで、毎日毎日結婚の準備に追われ、デートなんぞ二人きりでする余裕も無いほどの忙しさになった。

婚約期間中が、女の人生の至福の時、などと思っていたジュリアンはドラマの見すぎだったようだ。

とにかく忙しくて、現実問題としての決め事ばかりに追われ、あっと気が付くと、結婚式当日になっていた。

 

 

さて、次回はいよいよ最終回「泣かないお嫁さま」に乞うご期待!

 

徒然TOPへ HOME