ジュリアン有生の「徒然なるページ」

2月6日

第51回  おかしな草履でスーパーへ

ジュリアンは、レーズン入りの食パンが大好きで、必ず1日に1枚は食べる。6枚切りのそのパンをトースターで焼いて、バター風味のマーガリンを「ため池」ができるほどに塗りまくり、砂糖をかけて食べるのである。何だかとっても太りそうなこの食べ方が、とっても好きで好きで、ダーもレーズン入り食パンが好きなので、我が家の冷蔵庫には必ずレーズン入り食パンの買い置きが入っている。

なのになのに、あぁ、不覚にも昨日、レーズン入り食パンを食べようと冷蔵庫の扉を開いたら、

「ない!!」

くぅ〜〜。なんたる失態。レーズン入り食パン狂のこのジュリアンが、買い置きするのを忘れていたのである。

しかししかし、我が家から歩いて3分の所にレーズン入り食パンを売っているスーパーがあるので、ジュリアンはジャマくさいながらも、コートを着て、帽子をかぶり、手袋をして、いつものグッチのショルダーバッグを肩からかけて、買いに出かけることにした。

玄関で、お買い物行き用のブーツに足を入れようとしたものの、お腹が空いていたためジャマくさくなり、結局足下だけ、おかしな形の草履で行くことにした。

その草履は、上げ底靴が流行った時に買った「上げ底草履」で、足先がミッキーマウスの足のように、大きく丸くなっている。でも、「靴」ではなくあくまで「草履」なのだ。

「歩いて3分程の、そこのスーパーまでだからこれでいいわ」と思い、小走りにそのスーパーへ行くと、いつも必ずあるはずのレーズン入り食パンが、昨日に限って「売り切れ」。

いやぁ〜〜ん、まだ朝の10時半なのに〜。

ショック大のジュリアン。

考えた。その場で相当真剣に考えた。靴を履き替えに戻るべきか、このまま駅前の大手スーパーまで行くべきか。。。

結果、「誰も人の足下なんて、注意して見てないわ。このまま行っちゃえ!!」と結論づけた。

歩くこと15分。ようやく大手スーパーへ到着。レーズン入り食パンだけを買って、他のものは夕方に出直して買いに来よう、と思い、カゴを持たずに食パン売り場へ行こうとしたその時、後ろから見知らぬ誰か、歩くのが究極にヘタクソな誰かが、ジュリアンの履いていたおかしな上げ底草履のヒール(?)の部分を後ろからスコーンを蹴っ飛ばした。

そう、まるで、「だるま落とし」のように、草履はジュリアンの足下から一瞬にして消えた・・・

草履はスゴイ勢いで斜め前へ滑っていき、「あ!!」と思ったその先には、何とも運の悪いことに、バレンタイン用のチョコレートのワゴンがあり、草履はそのワゴンの下にネズミが隠れるように入って行った。

がぁ〜〜〜ん☆マジィ???

振り返ると蹴っ飛ばした誰かはもういない。ジュリアンは、草履をなくした右足をつま先立ち歩きにしながら、ワゴンの方へとヨタヨタ歩いていった。自動販売機の下にコインを落としたときのように屈んでみた。見えない。取れない。

仕方なくヨタヨタ歩きで店員さんを捜した。

事情を説明すると、店員さんは残された片方のおかしな上げ底草履の足下を見た。

店員さんは、社員教育が行き届いているらしく、ジュリアンの姿に笑う事もなく、イヤな顔ひとつせず、ワゴンをどけてくれた。

しかし、上げ底草履は、ワゴンに引っ掛かり、ワゴンと一緒に移動してしまい、どけてくれた後には何もなかった。

次の手段として、店員さんは今度は長いモップを持ってきてくれて、ワゴンの下をさらえてくれた。

成功!!

モップの移動と共に、哀れな姿の上げ底草履がでてきた。

ジュリアンは取り敢えず、店員さんにお礼を言い、そそくさと帰ってきた。

家に着いて、直ぐ思い出した。

あまりの精神的衝撃のため、肝心のレーズン入り食パンを買い忘れて帰ってきてしまった。

どうしてもどうしても、パンが食べたかったジュリアンは、じゃあせめて、レーズンが入っていなくてもいいから食パンが食べたいと思い、もう一度歩いて3分のスーパーへ行って、結局普通の6枚切りの食パンを買った。

1枚食べたものの、やはり夕食にもう一度レーズン入り食パンを食べないと気が治まらないと思い、夕方の買い物へ出た際、買ってきてようやくレーズン入り食パンにありつけた。結局この日は夕食もパンになってしまった。

夜、疲れて帰ってきたダーに言った。

「んなワケなんで、残った5枚の普通の食パンはダーにプ・レ・ゼ・ン・ト♪ うふっ」

 

皆さま、ちょっとだけだと思っても何が起こるかわからないもの。ジュリアンの失敗を教訓に「草履」で遠出するのは、やめましょうね!!

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